
東ローマ帝国(ビザンツ帝国)で流通していた金貨――それは、まさに「中世のドル」とも言える信頼と安定の象徴でした。
結論からいえば、ビザンツ金貨の特徴は、「純度の高さ」「長期間の安定流通」「国際通貨としての信頼性」「皇帝の肖像を用いたプロパガンダ性」などが際立っていたんです。
では、その代表的な金貨の種類と特徴を時代順に見ていきましょう!
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これこそビザンツ金貨の代名詞ともいえる存在です。
4世紀初頭、ローマ帝国時代のコンスタンティヌス1世(在位:306–337年)が発行を始めたソリドゥス(Solidus)が、のちのノミスマ(Nomisma)に継承されます。
ノミスマは約4.5グラム・純度95〜98%をほぼ維持し、約700年間も発行が続いた超安定通貨。
ビザンツ内だけでなく、西ヨーロッパ、イスラーム世界、スラヴ圏でも使われ、「この金貨なら安心」と信頼されていたんですね。
表には皇帝の横顔または正面像、裏にはキリストや十字架、天使などが刻まれており、皇帝の権威と信仰の象徴としても使われていました。
ところが11世紀以降、ちょっとした“信用問題”が起こってきます。
財政難や軍事費の増加から、金貨の純度が徐々に落ちていき、国際的な信頼性に陰りが出はじめます。
これが後の通貨改革へとつながっていくんです。
12世紀、アレクシオス1世コムネノス(在位:1081–1118年)の通貨改革によって登場するのがハイパーピュロン(Hyperpyron)。
ハイパーピュロンは、かつてのノミスマに代わって国際的な信頼を取り戻すために導入されました。重さは約4.45グラム、純度は落ちるけどそれでも信頼は回復傾向。
ハイパーピュロンは凹型の「トラケイコン」形式が多く、視覚的にも非常に印象的。
図像は相変わらずキリストと皇帝がセットで描かれ、信仰と権威を両立するデザインでした。
ビザンツ金貨は、ビザンツ帝国内だけでなく、世界通貨としての地位を長らく維持していました。
特に10〜11世紀までは、ビザンツ金貨がイスラム市場・イタリア都市国家・ルーシ(キエフ)でも通用していたんです。
それだけ造幣技術と品質管理が高度だったということですね。
13世紀に入ると、ビザンツの経済力が落ちていき、代わりにヴェネツィアやジェノヴァの金貨が国際標準になっていきます。
でもそのモデルは、そもそもビザンツ金貨にインスパイアされて作られたとも言われているんです。
東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の金貨は、ただの貨幣じゃなくて、政治・宗教・経済を象徴する“国家の顔”だったんですね。
このように、ノミスマやハイパーピュロンといった金貨は、帝国の信用・威信・そして国際的な影響力を長く支えていたのです。